今回は世帯年収500万円で住宅ローンを組む場合の総額や用意すべき頭金、実際に購入された事例について紹介していきます。
目次
世帯年収500万円の生活レベルとは
年収500万円の場合、所得税・住民税・健康保険料・雇用保険料・年金などが引かれ、実際に手元に残る金額はおよそ380万円〜400万円になります。
12ヶ月で割ると1ヶ月あたりの月収は約32万円になり、総務省統計局による2人以上の世帯の平均的な月間消費支出27万7,926円よりもやや高い金額となっています。
世帯年収500万円で住宅ローンを組む場合の借入上限は?
実際に世帯年収500万円の場合、どのくらいの住宅ローンが組めるのでしょうか?年収倍率と返済負担率の2つの観点で確認してみましょう。
年収倍率で考える
年収倍率とは、購入する住宅価格が年収の何倍かを示す倍率で、住宅購入価額÷現時点での年収という計算式で算出が可能です。年収倍率は、金融機関が住宅ローンの融資審査をする際の融資可能額を判断する基準としても用いられます。
年収倍率の平均は6.5倍程度ですが、住宅ローンの借入額は月々の返済額を考慮して年収の5~6倍程度とするのが一般的です。
返済負担率で考える
返済負担率とは、返済比率とも呼ばれ、年収に対して1年間に返済する金額がどのくらいの割合を占めるのかを表した割合になります。年間の返済額合計÷現時点での年収×100という計算式で算出が可能です。返済負担率は、住宅ローンの審査で重要視される項目の一つであり、住宅ローンの返済額だけでなく、マイカーローンや教育ローン、カードローンなど、他の返済額を含めて計算されます。
返済額と金利の関係
住宅ローンを借り入れる場合、金利も重要なポイントになってきます。住宅ローンの返済額は、金利の影響を大きく受けるからです。
事前に金利の仕組みや種類、特徴などを知っておけば、損をしない賢い返済計画を立てられるようになるでしょう。
そこで、ここからは、返済額と金利の関係を詳しく解説していきます。
金利の優遇
住宅ローンを組む際、金融機関ごとに金利の優遇や割引を実施しています。これを優遇金利といい、所定の条件を満たしていれば、もともと金融機関が設けている住宅ローンの基準金利よりも低い金利が適用される制度です。金利引き下げとも呼ばれ、給与振込の依頼、クレジットカードの所持、ネットバンキングの利用など、住宅ローンを申し込む金融機関との予約扱いを含んだ一定取引がおもな条件となります。
優遇金利の具体的な内容は、住宅ローンを借り入れる金融機関によって異なり、さらに、優遇金利そのものも「当初優遇」と「通期優遇」の2種類に分かれるため、それぞれの特徴を把握しておかなければなりません。
当初優遇とは、決められた(当初)期間とそれ以降の優遇金利が変わるタイプであり、通期優遇とは、借り入れ時から完済時まで優遇金利が変わらないタイプです。
変動金利と固定金利
金利には、おもに「変動金利」と「固定金利」があります。変動金利とは、住宅ローンの借入期間中、半年に1度金利が見直されるタイプです。一般的に、固定金利よりも低い金利が適用されます。ただし、金利上昇のリスクが否めません。また、金利変動の影響から返済額が変わるため、資金計画が立てにくい点も特徴です。
一方の固定金利とは、その名の通り、住宅ローンの借入期間中、金利が変わらないタイプになります。金利が一定のため、住宅ローン完済までの長期的な返済計画が立てやすいといったメリットがある半面、変動金利よりも金利が高くなりがちです。
また、金融機関によっては「固定金利期間選択型」と呼ばれる一定期間毎に固定金利か変動金利かを選べるタイプや、住宅ローンを固定金利と変動金利で分けて借りる「ミックス型」と呼ばれるタイプもあります。
頭金と金利
頭金を払えば、金利が安くなるケースもあります。これは、住宅ローンを申し込む金融機関にもよるのですが、フラット35を利用する場合90%以下のローンであれば、頭金を10%支払った方が0,2%ほど金利が安くなるため、お得になるのです。ただし、急な出費への備えを考慮し、頭金の払いすぎには注意しましょう。
金融機関ごとの違い
住宅ローンを借り入れる金融機関によっても、金利や審査に大きな違いがあります。たとえば、メガバンクと呼ばれる都市銀行やネット銀行の場合、金利が安く設定され、利便性がある反面、審査が厳しくなりがちです。また、地方銀行や信用金庫の場合、金利が高く設定されているものの、審査に融通が利きやすい特徴を持っています。金融機関ごとに、事務手数料や保証料などの諸費用、特典も異なるため、自分の事情や条件に最も適した金融機関を探すようにしてください。
最終判断は金融機関
借入可能額の決定権は、住宅ローンを申し込んだ金融機関が持っています。
金融機関が定める住宅ローンの審査規定に照らし合わせ、申込者を「事前審査」と「本審査」の2段階でチェックする流れが一般的です。
最初の事前審査に通れば、購入物件の売買契約が締結できます。そして、次の本審査が通過した場合、住宅ローンの条件が確定する仕組みです。
金融機関が重視する住宅ローンのおもな審査項目としては「完済時の年齢」「健康状態」「購入する不動産の担保評価」「借入時の年齢」「年収」「勤続年数」「連帯保証人」「返済負担率」などが挙げられます。国土交通省の住宅ローンに関する実態調査によれば、どれも90%以上の確立で調査対象になる項目です。
また、「勤務先の雇用形態」「他の借入金」「国籍」「申込人との取引状況」なども高い割合で審査される項目となっています。
金融機関がおこなう審査で重要なポイントは、返済負担率です。この返済負担率とは、年収に対する住宅ローンの年間返済額の割合になります。
年収から返済に充てる金額を調べる場合、住宅ローンの返済額のみならず、クレジットカードやマイカーローン、教育ローンや消費者金融ローンなど、他の借入金も、返済負担率を割り出す項目となるため、審査申込書は、正確に記入してください。
審査の結果次第では、借り入れを断られる場合、借入額が希望に満たない場合、返済期間が短い場合、金利を高めに設定される場合などがあります。
住宅ローンを最大借入可能額まで借りるのは危険
年収が500万円あれば、一般的な住宅ローンの最大借入可能額が約4,000万円となります。フラット35を利用すれば、約5,000万円までの借入が可能です。
しかし、住宅ローンを最大借入可能額まで借りることは、大きなリスクを伴います。
その理由として、労働環境や体調、ライフイベントや社会情勢の変化など、想定外の問題に直面し、住宅ローン借入時に立てていた返済計画に狂いが生じるかもしれないからです。
想定外の問題として、新型コロナウイルスの蔓延が一例に挙げられます。世界経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルスの流行は、労働環境を一変させ、企業の倒産やリストラ実施、給与やボーナスの減額などを引き起こす原因となりました。
そのため、住宅ローンの返済が難しくなり、不動産を売却した人も少なくありません。また、予期しない事故やケガなどによって収入を失う場合や、子どもの教育費用が想像以上にかかってしまう場合、親の介護費用負担を迫られる場合なども考えられます。
このように、個人の問題のみならず、社会情勢を含んだ想定外の事態を受け、住宅ローンの返済が続けられなくなる危険性を考慮し、無理のない健全な返済計画を慎重に決断・実行することが重要なポイントです。
世帯年収500万円の場合の最適な住宅ローン借入額は?
年収倍率の全国平均が5.5~7.3倍と言われているため、年収500万円の場合、住宅ローンの借入額は2,750万~3,650万円が平均となります。
住宅ローンの返済に回せる月額の返済負担率は約10.1%のため、実際の手取りから1ヶ月の平均的な支出を差し引くと、約4万2,000円が毎月の住宅ローン返済に回せる平均額となります。
仮に、毎月6万円ずつ返済する場合(借入期間35年、金利年1.04%、全期間固定型)、借入元金は2,111万円、総返済額は2,520万円(うち支払利息合計額409万円)となります。
購入する住宅の種類や地域、家計の状況、金利の種類によって、現実的な借入額は変動しますが、返済に無理のない借入額を決めるためには、家庭の全体支出がどのくらいかを把握した上で検討することが大切です。
世帯年収500万円で住宅ローンを組む場合の方法
実際に住宅ローンを借りる場合、どのような方法で借り入れるべきなのでしょうか?
単独で住宅ローンを借りる
夫婦で夫の年収の方が高い場合に、夫単独でローンを組む方法があります。メリットとしては、より収入の高い年収で審査を受けることが可能になります。ここに妻の年収を合算するという形で審査が行われるのが一般的ですが、多くの住宅ローンでは妻の年収の2分の1を合算して審査を受けることになるため、審査の対象になる年収は実際の世帯年収よりも少なくなってしまうデメリットがあります。
ペアローンで住宅ローンを借りる
ペアローンと呼ばれる夫婦2人を借主として住宅ローンを組む方法もあります。この場合、夫婦2人が債務者となるため、合算された世帯年収で審査を受けることができます。単独で組むよりもペアローンのほうが審査は有利に進みますが、夫婦間で名義を借り換えたり、繰上げ返済を行うと、贈与税が発生してしまうケースがあります。
贈与にならないようローンの持ち分に合わせて登記を行っておくなど、あらかじめ注意が必要です。
世帯年収500万円の場合の頭金や諸費用について
住まいを購入する際には、頭金やその他の諸費用がかかってきます。世帯年収500万円の場合の具体的な費用について紹介します。
世帯年収500万円の場合の頭金の平均額
住宅金融支援機構によるフラット35利用者調査において、2020年度の頭金の平均値については、自己資金の割合は物件価格の7.1%〜17.5%となっています。世帯年収500万円における融資額の概算2,454万円で計算すると、頭金は174.2万円〜429.5万円程度用意しておくといいでしょう。
世帯年収500万円の場合に必要な諸費用
金利が低いネット銀行などでは手数料として、借入金額の2.16%の場合、2,500万円の住宅ローンを借りる場合には54万円の手数料が必要になります。また、住宅購入には登記の手続きも必要になるため、登記費用で2〜30万円は見ておく必要があります。
これらの費用で合計100万円程度の予算を準備しておくとよいでしょう。
世帯年収500万円で購入できる物件
実際に購入された事例をもとに、東京都と地方の購入物件の違いを見ていきましょう。
一戸建て
■東京都足立区の事例・新築木造3階建て
・3LDK
・最寄駅から徒歩24分
・土地面積39.79㎡ 建物面積57.89㎡
・金額 2,380万円
・主な設備:食器洗い乾燥機、温水洗浄便座、追い焚き機能、浴室乾燥機、TVモニター付きインターホンなど
■熊本県熊本市の事例
・新築木造2階建て
・4SLDK
・最寄駅からバス7分+徒歩9分
・土地面積154.7㎡ 建物面積104.49 ㎡
・金額 2,399万円
・主な設備:温水洗浄便座、浴室乾燥機、追い焚き機能、TVモニター付きインターホン、全居室収納、駐車場など
マンション
■東京都町田市の新築マンションの事例・最寄駅から徒歩6分
・専有面積36.53㎡ バルコニー面積5.85㎡
・1LDK
・金額 2,390万円
・主な設備:床暖房、宅配ボックス、非接触キーシステム、カラーモニター付き多機能インターホン、浄水器一体型シャワー水栓など
■熊本県熊本市の新築マンションの事例
・最寄駅からバス約43分と徒歩9分
・専有面積60.08㎡ バルコニー面積11.77㎡
・2LDK+SC
・金額 2,420万円
・主な設備:ガス温水式床暖房、ガス温水式浴室暖房乾燥機、ビルトインガラストップコンロ、宅配ボックス、カラーモニターハンズフリーインターホン、24時間セキュリティなど
世帯に合った最適な購入計画を
今回は世帯年収500万円の人が借りられる住宅ローンについて紹介していきました。
現状の年収だけでなく、起こり得るさまざまな状況を想定した上で世帯に合った購入計画を検討してみてください。
監修者
大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。