
マイホームの買い替えを検討中の方へ
- 家の買い替え時に発生する税金について解説します
- この記事で概要をチェック
- 買い替え特例を利用すれば、譲渡所得税を軽減することが可能です
この記事では、マイホームの買い替え時にかかる税金の概要、その負担を軽減するために利用できる特例の要件やメリット・デメリットなどを分かりやすく解説します。
目次
マイホームを買い替えのために売却した際にかかる税金
買い換えのために現在所有しているマイホーム(不動産)を売却すると、以下の税金が発生します。
売却前に確認しておきましょう。
税金① 譲渡所得税
マイホームを売却すれば、譲渡所得(売却価格の一部)に税金が課せられます。不動産における譲渡所得の税率は、譲渡資産の所有期間によって異なり、所有期間が5年を超える不動産を譲渡した場合、その売却価格から取得費や譲渡費用などの必要経費を差し引いた長期譲渡所得に20,315%の税金がかかる仕組みです。
■譲渡所得と譲渡所得税の計算
譲渡所得は、不動産を売却した際に得た利益である譲渡益をもとに計算します。
譲渡益は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で算出し、そこから特別控除を適用した金額です。
また、譲渡所得税は「譲渡所得×20,315%(長期譲渡所得の場合)」で算出します。
税金② 印紙税
印紙税とは取引などで契約書を作成する場合に、書類にかかる税金のことです。取引の金額や種類に応じて、必要分の収入印紙を購入し、証票を契約書に貼付して納税する必要があります。印紙税が必要な取引は20種類あり、企業間の取引や売買契約、消費貸借契約、請負契約などが対象に含まれます。
税金③ 登録免許税
登録免許税とは、物件などを登記する際にかかる税金のことです。税額は登記の内容によって異なり、1件あたり1,000円のものから課税標準額に税率をかけるものまでさまざまです。原則として、現金で納付する決まりとなっています。
マイホームの買い替え時に利用できる特例
マイホームを買い替えるとき、売却した持家の収入金額が利益を生んだ場合、譲渡所得税を収めなければなりません。
その際に利用できる特例がマイホームの「買い替え特例」です。
買い換え特例とは?
「買い替え特例」とは、正式名称を「特定の居住用財産の買換えの特例」といい、要件を満たせばマイホームを買い替える際に課される税金を、将来に繰り延べることができる制度です。本来は不動産を売却すると、売却金額が購入代金をはじめとする物件の取得費用や仲介手数料、登記費用などの譲渡費用を差し引いた金額を越えた場合、その利益分が課税の対象となります。
しかしこの特例を使うと、今回の売却によって得た利益に対する課税を、次回のマイホーム売却時に繰り延べることができるようになります。
この特例を適用すれば、税金の負担を軽減することが可能になります。
買い替え特例を利用するための要件
マイホームの買い替え特例は、一定の条件を満たさなければ適用できません。
特例を利用するために必要な要件は買い換える家と売却する家で異なるため、ここではそれぞれに必要な要件を解説していきます。
買い替える家の要件
買い替え特例を適用する場合、家主が買い替える家に住んでいたことが大前提です。また、家主が該当物件から3年以上離れない、10年以上の居住、売却価格が1億円以下、売却先が親族ではない、他の特例の併用できないことなどが主な要件になります。
売却する家の要件
売却する家の要件は、国内の物件に限られています。また、土地が500平米以下、建物の床面積が50平米以上、新耐震基準を満たしていること、建築後年数が25年以内、売却の前年から翌年まで3年以内で買い換えていることなどが適用条件です。
買い替えの特例を利用するメリット・デメリット
マイホームを買い替えるときに、売主の負担を減らせる買い替え特例なのですが、利用の際は、事前に特性を把握しておく必要があります。ここからは、買い替え特例を利用するメリットとデメリットを見ていきましょう。
特例を利用するメリット
買い替え特例を利用すれば、費用の負担を軽減することが可能になります。具体的には、譲渡所得税の支払いを先延ばしにできるため、資金に余裕のない家の買い替え時に、多額の税金を収める必要がなくなるということです。これは特例利用者にとっての最大のメリットになります。この特例を適用した場合、買い替えた新居を売却しない限り、長期に渡って譲渡所得税を支払わずに済みます。
特例を利用するデメリット
買い替え特例を利用する際のデメリットは、買い替えた新居を再度売却するとき、前回分と同時に譲渡所得税を全額収めなければならない点です。この特例は、あくまでも納税を先延ばしにする制度であり、非課税になるわけではありません。また、ほかの特例や控除との併用ができないといった特性があるため、利用を検討するときは、十分な注意が必要となります。
買い替え時に利用できるその他の特例について

マイホームを買い替えるとき、前述の買い替え特例以外にも、節税に役立つ制度が複数あります。
具体的にはどのような制度があるのでしょうか? ここからは、売却益が出た場合に利用可能な特例を解説します。
その他の特例① 3,000万円の特別控除
3,000万円の特別控除とは、居住用財産を売却した場合に適用できる特例です。物件の売却益が3,000万円まで非課税となるため、一般的なマイホームの買い替えであれば、多くのケースで適用可能となります。おもな適用の要件は、所有者が該当する物件に住んでいること、所有者が住まなくなってから3年目の年末までに売却すること、売主と買主が親子や夫婦といった特別な関係でないことなどです。
その他の特例② マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例とは、売却した持家の所有期間が10年を超える場合に適用できる制度です。この制度を利用すれば、通常20,315%の税率を売却益6,000万円までなら14,21%に軽減できます。おもな適用の要件は、売却した年の1月1日時点で売却した土地と建物の種有期間が10年を超えていること、所有者が該当する物件に住んでいることなどです。また、先の3,000万円の特別控除と併用可能な特例になります。
10年超所有したマイホームを売ったとき、利用できる軽減税率の特例は次のとおりです。
譲渡所得 6,000万円以下の場合 |
譲渡所得6,000万円超の場合 | ||
6,000万円以下の 部分 |
6,000万円超の 部分 |
||
所得税 | 10.21% | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4% | 4% | 5% |
合計税率 | 14.21% | 14.21% | 20.315% |
その他の特例③ 特定の居住用財産の買換えの特例
特定の居住用財産の買換えの特例とは、売却益にかかる税金の支払いを先延ばしにできる制度です。ただし、あくまでも先延ばしであり、非課税になるわけではありません。課税のタイミングは、将来的に新居を売却したときであり、その際に前回の税金とまとめて支払う仕組みになっています。上記の特例と比較した場合、適用するための要件が多いため、利用時には十分な注意が必要です。
売却して損失が出た場合
不動産を売却して損失が出た場合、2つの特例が利用できます。
・損益通算
・繰越控除
損益通算
損益通算とは、同一年の利益と損失を合算することを指します。例えば不動産などを売却して利益を得たものの、事業で赤字を出してしまった場合、不動産の売却益と事業所得の損失を合算できます。損益通算の最大のメリットは、利益と損失を相殺できることです。先ほどの例でいえば、不動産売却で利益が出た場合、利益に対して課税されます。
しかし損益通算で事業の赤字と相殺すれば、全体の利益が少なくなり、課税額も少なくなります。
繰越控除
繰越控除は、損益通算を行っても損失額を相殺しきれない場合に、残った損失分を最大3年間まで繰り越せる制度です。翌年以降に利益が出た場合、繰り越した分の損失と相殺することで課税所得を少なくする効果があります。また、翌年の利益と相殺しても損失が残る場合は、さらに翌年にも繰越控除が可能です。株式や投資信託などで損失が出たときにも、繰越控除を利用すれば課税所得を抑えることができます。
ただし、繰越控除を利用する場合は次の点に注意しましょう。
・確定申告が必須
・NISA口座での損失は他の口座で得た利益と損益通算も繰越控除もできない
特例を利用した場合の確定申告について
マイホームの買い替えや税金の特例を利用する場合、確定申告が必要になります。
しかし、実際の確定申告とは、具体的にどのような手続きをおこなえばよいのでしょうか?ここからは、確定申告のタイミング、必要書類、提出方法を解説します。
確定申告のタイミング
買い替えの確定申告は、物件を譲渡した直後すぐにおこなう必要はありません。確定申告の手続きをおこなうタイミングは、物件を売却した翌年です。具体的には、毎年2月16日~3月15日頃までとなっており、この時期に確定申告をおこなってください。
必要書類
確定申告の手続きをおこなう際、以下の書類が必要です。
・確定申告書B様式(第一表)
・確定申告書第三表(分離課税用)
・譲渡所得の内訳書
・登記事項証明書
・本人確認書類
・源泉徴収票
・不動産購入時の売買契約書、不動産の取得費用が確認できる領収書、不動産売却時の売買契約書、不動産の譲渡費用が確認できる領収書、それぞれのコピー
提出方法
実際に確定申告をおこなう場合、揃えた必要書類を税務署へ提出するだけです。具体的な方法は、税務署の窓口に直接持参するほか、郵送やオンラインによる提出も可能となっております。初めて確定申告するときは、書類の不備などを指摘してくれる窓口への提出が無難でしょう。
買い替え時の特例は状況に応じて利用すること
マイホームを買い替える際、持家を売却したことで得た利益に譲渡所得税が課せられます。不動産売却における譲渡所得税の通常税率は20,315%と大きな負担になることから、買い替え時に適用できる特例を使って節税対策をおこなうべきです。
ただし、特例の利用にはデメリットもあります。買い替え特例や3,000万円の特別控除、特定の居住用財産の買換えの特例などを利用するときは、事前に各制度の特徴を確認し、自分の状況に最も適した特例を適用するように心がけましょう。
監修者

大沼 春香(おおぬま はるか)
宅地建物取引士
埼玉県・千葉県・東京都一部に拠点を置く
不動産売買仲介会社に15年以上従事。
自身も不動産購入を経験し「初心者にもわかりやすい」
実態に基づいたパンフレット・資料に定評がある。
最近はWEBや自社セミナーなどでの情報発信も行っている。